縁の下の力持ち コンプレッサー基礎知識

インガーソルランド3-R-36型コンプレッサー(画像:守山進)
人知れず縁の下の力持ちとしてさまざまな場所で働いている産業機械に、エアコンプレッサーがある。空気を圧縮し、それをさまざまな機器の動力源とするための設備機器の一種である。
【貴重画像】「エッどういう仕組み?」 高性能コンプレッサーを見る(4枚)
工場では、レンチやカッターなどのエアツールやその他さまざまな機器の動力源として。工事現場では、ブレーカーやコンパクターの動力源として。採石現場では、削岩機の動力源として。
これら自体は定置状態で使用する機器以外にも、トラックや建設機械、鉄道車両などではブレーキその他の補機類を作動させるために、まさに必須の装置である。
また単に動力源としての空気を圧縮するだけでなく、冷蔵/冷凍設備においては冷媒を圧縮する上でも無くてはならない。
コンプレッサーはその用途に応じて、例えば模型塗装用のエアブラシに使う卓上サイズの小型機から大規模工場で使う大型機まで、さまざまなサイズとメカニズムを駆使して使われているという、まさに現代社会に無くてはならない存在なのである。
コンプレッサーの構造は、その用途に合わせてさまざまなモノがこれまで登場している。
その中でも最もポピュラーなものといえば、レシプロピストンタイプのコンプレッサーをエンジンやモーターで駆動するものである。このタイプは汎用性も高く何よりもシンプルである。
50年代に誕生したユニークな製品とは
ただしコンプレッサーの長い歴史の中には、今となっては見ることもできないユニークな個体も存在していた。
今回紹介するアメリカ製のインガーソルランド3-R-36型コンプレッサーも、まさにそんな1台だと言って良いだろう。
インガーソルランド3-R-36型コンプレッサーは1950年代初め、可搬式すなわち台車などに載せた状態で軽便に移動可能、かつ発生空気圧に十分な能力を持たせることがこのコンプレッサーとして開発された。
インガーソルランドというのは、高性能なコンプレッサーを製造することでは定評があった名門である。
一方、この製品を見て誰しもが思うのは、とてもコンプレッサーには見えないということだろう。
しかしこれもまた、構造的にはエンジン駆動のレシプロピストンタイプである。それでは、具体的にはどういう構造になっていたのだろうか?
まず駆動用エンジンだが、斜め上に向かって排気管が出ている部分がシリンダーヘッドに相当している。
排気管の数は三つ。すなわち3気筒ということである。
クランクシャフトのレイアウトは垂直。その周囲に三つの空冷シリンダーがレイアウトされているという、いわゆる星型エンジン(欧米での呼称はラジアル/放射状エンジン)となっているというわけである。