焦りの「強制併合」プーチン大統領〝蟻地獄〟 「部分動員」「無策」で求心力低下 ロシア国民が暴徒化も 「国内の結束図る狙いが裏目」識者

By | October 2, 2022


ロシア国旗

【写真】ウクライナ軍の攻撃で破壊されたとするロシア軍陣地

「運命はロシアと共にある。住民は永遠にロシア人になる」と演説で語ったプーチン氏。4州の親露派代表と「併合条約」に調印し、ウクライナに直ちに戦闘を停止し、交渉の席に着くよう求めた。一方で、4州の併合は譲れないと強調し、全土奪還を目指すと表明しているウクライナとの対話による紛争解決は一層困難になった。

米国のジョー・バイデン大統領は、声明で「主権国家の領土を不正に併合しようとしている」と非難。米英両政府はロシア中央銀行のエリヴィラ・ナビウリナ総裁に対する資産凍結などの制裁措置を発表した。

自由主義陣営が認めるはずもない荒唐無稽な「併合」をなぜ急いだのか。筑波大名誉教授の中村逸郎氏はプーチン氏の演説からこう分析する。

「ロシアの伝統や文化を強調し、欧米への敵対姿勢を打ち出すことで国内の結束を図る狙いがあったのだろう。だが、軍事作戦は劣勢で、併合を『戦果』として強調できなかったことが最大の弱みだ。軍事作戦の終了にも踏み込めず、新しい政策もなかった。プーチン氏の無策は国民の不安に拍車をかけるだけになった」

4州では9月23~27日にロシア編入を求める「住民投票」と称する活動を実施、親露派はいずれも87~99%の高い率で支持されたと主張している。ただ、投票は公正に行われたものではなく、4州のうち、親露派支配地域はドネツク州が約60%、ザポロジエ州で約70%に留まっている。

元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は「編入地域を『ロシア本土』とすることで、国民を動員して第一線の兵士を確保したり、戦術核を使う口実にしたり、西側諸国の武器供与を渋らせる狙いがあるだろう」とみる。

だが、プーチン氏は、21日に30万人規模の予備役の部分的動員令を発した以降、国内で苦境に立たされている。

大規模な抗議活動のほか、関係施設で放火や、銃撃事件にまで発展した。動員を逃れるために旧ソ連諸国などへの脱出も加速しているが、現地の独立系メディアでは、市民の不満拡大を懸念する当局が国境を閉鎖できずにいると伝えるなど、収束に手を焼いているようだ。

クレムリンのサイトによると、プーチン氏は29日に開催された国家安全保障会議で動員の過程に言及し、「市民から多くの情報が寄せられる。すべての問題は修正され、将来、発生するのを防ぐ必要がある」と事実上誤りがあったことを認めた。

露独立系世論調査機関「レバダ・センター」が9月22~28日に1631人を対象に実施した調査では、「プーチン氏の活動を支持する」と答えた人は77%。これでも高い数字ではあるが、侵攻開始以後3月から8月まで82~83%だったのが、前月調査から6ポイントも減らしたのは注目に値する。

■ロシア国民が暴徒化も

前出の中村氏は「ジョージア国境などで脱出できず、立ち往生している国民が暴徒化する可能性もある。地方では反戦の動きが強く、プーチン氏と政権内の強硬派との間でも意見の食い違いがある。これらの勢力が『反プーチン』を旗印に組み、クーデターが起こる可能性は常に残される」と語った。

戦況も厳しさを増している。ウクライナ軍の激しい反攻が続く東部ドネツク州では、同軍が北部リマン周辺で、複数の方向から領土の奪還を進めつつあると米シンクタンクの戦争研究所が分析した。リマンは5月に親露派が完全掌握した地域で、ロシア軍の重要な拠点だ。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は30日、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を正式に申請すると表明したが、戦況にどう影響するか。

前出の渡部氏は、ゼレンスキー氏の狙いについて「プーチン氏の国内向けな荒唐無稽な主張を実力で『有名無実化』する戦略だ。今後も反転攻勢の動きを加速させるだろう。プーチン氏は蟻地獄にますます落ち込んでいく」との見解を示した。



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