サイバーエージェントは「ウマ娘」効果が剥がれ落ち…今後のカギを握るABEMAの成否

By | June 2, 2023


効果は絶大だった(C)日刊ゲンダイ

 スマホゲーム「ウマ娘・プリティーダービー」が2021年、ネット流行語大賞を受賞した。ニコニコ大百科とピクシブ百科事典へのアクセス数でその年に伸びた上位100単語を抽出。その中からもっとも変化率が大きかった単語を選出した。

サイバーエージェント創業社長の藤田晋氏が「3年後に社長を譲る」宣言の波紋

「ウマ娘」が大賞を獲得したほか、2位に「ゴールドシップ(ウマ娘)」、9位も「ライスシャワー(ウマ娘)」と、モデルになった馬の名前がランクイン。ウマ娘の人気の高さを見せつけた。

「ウマ娘」は、実在する競走馬をモデルに美少女キャラに擬人化して走らせる、サイバーエージェントのゲーム子会社サイゲームスのスマホゲームだ。21年2月に配信され、10月時点で1100万ダウンロードを超えるなど快進撃を続けた。「ウマ娘」効果で、サイバーエージェントの株価は21年6月24日、2441円を付け、10年来の高値を更新した。

 ところが、年が明けた22年1月27日、同社株は一時、前日比276円(16.4%)安の1410円まで急落した。「ウマ娘がピークアウトしたのではないか」との懸念が投資家に広がったからだ。「ウマ娘」効果が剥げ落ちれば収益の悪化は避けられない。「ウマ娘」のようなヒット作が次々と生まれることは期待できない。

 投資家の杞憂は現実のものとなった。22年9月期の連結決算は売上高が前期比7%増の7105億円、営業利益は34%減の691億円、純利益は42%減の242億円だった。主力のインターネット広告事業が好調で増収になったが、「ウマ娘」の失速が減益に直結した。

 ゲーム事業の営業利益は37%減の605億円。21年9月期は20年同期比で約3倍の964億円へ急拡大した。

 人気アニメを題材にした「呪術廻戦ファントムパレード」など、新作ゲームを発売して立て直しを図ったが、それでも23年9月期の純利益は150億~200億円と2期連続の減益を見込む。売上高は前期比1%増の7200億円を想定している。

■赤字続きの「ABEMA」は浮上するか

 サイバーエージェントの事業は広告、メディア、ゲームが3本柱だ。立ち上げ以来7期連続で赤字が続くインターネットTV「ABEMA(アベマ)」が今後のカギを握る。

 アベマを始めたのは16年。無料で番組を配信し広告収入を得る収益モデルだ。地上波で見られないコンテンツが人気を博し、アプリの累計ダウンロード数は8000万を超え、動画配信サービスとしては国内最大級である。それでも番組制作や宣伝など多額の出費を広告収入だけでは賄いきれず、22年9月期のメディア事業の営業損益は124億円の赤字。7期連続で赤字となった。

 22年11月20日から開催された「FIFAワールドカップカタール」の放映権を「ABEMA」が200億円で取得。全64試合の無料中継を行った。

 過去最大の投資となった「ワールドカップ」の寄与で、23年第1四半期(22年10~12月)のメディア事業の売上高は前年同期比34%増の334億円と大幅に増えた。しかし、営業損益は93億円の赤字。スポーツ観戦の有料チケットの販売など、単純な広告頼みのビジネスモデルから脱却し、収益源の多様化を急ぐ。

 ABEMAの営業黒字化が最大で喫緊の経営課題だ。社長の藤田は21年12月、映像制作会社、バベルレーベル(東京・新宿区)を子会社にした。メディア事業は年間300億円とみられるコンテンツへの巨額投資がかさみ、営業赤字から抜け出せていない。

 バベル経由でコンテンツを提供。メディア事業の新たな収益源をつくる狙いがある。=敬称略

(有森隆/経済ジャーナリスト)



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