【ウクライナ南部(大統領専用列車内)=笹子美奈子】ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が23日に読売新聞の単独インタビューに応じたのは、南部ヘルソンを訪問後、首都キーウに戻る列車内だった。多くの暗殺計画を切り抜けてきた大統領の警護は、きわめて厳重だった。
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多くの暗殺計画回避

読売新聞の単独インタビューで、「ロシアは我々の領土から出て行かなければならない」と語るゼレンスキー大統領=笹子美奈子撮影、画像は一部修整しています
北上する列車に夕日があたり始めた頃、ゼレンスキー氏は寝台車両の一室に現れた。黒のセーターにカーキ色のズボン姿。座席に浅く腰掛けると、鋭い目つきで記者を見つめた。声はかれていたが、危険を伴う前線訪問の疲れをにじませることもなく、58分のインタビューの間、水も飲まずに、ひたすら語り続けた。
車窓には、穀倉地帯が広がっていた。大統領専用列車の外観は一般乗客が使用する列車と同じだ。ゼレンスキー氏は特別扱いを嫌うという。大統領を乗せて移動中の列車だとは知らず、一時停車中に物売りが近づいてきた。
インタビューの場所と時間は、直前に数度変更された。昨年2月にロシアが侵略を開始した後、ゼレンスキー氏は10回以上の暗殺計画を切り抜けてきたとされる。列車は一般車両を装っているが、警備兵が慌ただしく動き回っていた。

23日、ウクライナ南部ヘルソンを視察するゼレンスキー大統領(左から4人目)=ロイター
「違う、そうではない。同じ価値観を共有していると言ったのだ」
ゼレンスキー氏はインタビューで、自身がこだわる点については力を込め、丁寧に説明した。途中でウクライナ語の通訳を遮って英語で語り出し、ほとんどの質問に英語で答えた。最も時間を割いたのは日本へのさらなる支援要請で、先進7か国(G7)議長国としての役割に強い期待感を示した。
日本が受け入れている2300人以上のウクライナからの避難民へのメッセージを求めると、「日本を愛せ。でもウクライナ人であることを忘れるな」と冗談を飛ばし、元コメディー俳優の一面も見せた。
反転攻勢…武器足りず「まだだ」

(写真:読売新聞)
ゼレンスキー氏はインタビューで、弾薬や戦闘機などの武器支援がさらに必要になると訴えた。
ウクライナ東部の戦況について「良くない」と認めたゼレンスキー氏は、その理由を「弾薬不足」と繰り返した。ロシア軍は連日ウクライナ軍の約3倍の弾薬を発射しており、「我々はパートナー国から弾薬が届くのを待っている」と語った。