
2022年のカタール大会で初めて実現するイギリスの闘い。左はウェールズのイーサン・アンパドゥ選手、右はイングランドのハリー・ケイン選手
2022年の男子サッカー・ワールドカップカタール大会では、W杯史上初の試合が実現する。
【画像】1895年のイングランド代表チームの写真
それがイングランドとウェールズが対戦する「Battle of Britain(イギリスの闘い)」だ。
イギリスのチームがワールドカップで対戦するのは今大会が初めてで、注目されている。
しかしそれにしてもなぜ、イギリスから複数のチームが出場できるのだろうか?現地時間11月29日(日本時間30日午前4時)の試合を前に振り返る。
理由はサッカーの起源にあり
その理由は、近代サッカーの歴史にある。
イギリスは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの国から成り立っている主権国家で、正式名称は「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」だ。
それぞれに独立したサッカー協会があり、その歴史はサッカーワールドカップを主催するFIFA(国際サッカー連盟)よりも長い。
<4つの国に協会ができた年>
・1863年:イングランドサッカー協会(FA)
・1873年:スコットランドサッカー協会(SFA)
・1876年:ウェールズサッカー協会(FAW)
・1880年:アイルランドサッカー協会(IFA)
最初に設立されたイングランドサッカー協会の正式名称は「フットボール・アソシエーション(サッカー協会)」。
名前にわざわざ「イングランド」とつける必要がなかったのは、世界最初のサッカー協会だったからだ。
その後、他の国でも協会が設立され、世界最初のサッカー国際試合は、1872年にイングランドとスコットランドの間で行われた。
また、1886年にはこの4つの協会によって、サッカーのルールを調整する国際サッカー評議会が設立されている。
つまり、サッカーの国際試合は元々、この4つの国で行われるものだったのだ。
FIFA登場
その後、サッカーは世界各地に広がり、20世紀に入るとこの4カ国以外での国際試合も増加した。
そして、サッカー評議会ができてから約20年後の1904年に、FIFAが設立された。
設立の目的は、国際試合を統括する組織を作ることで、ベルギー、デンマーク、フランス、オランダ、スペイン、スウェーデン、スイスの7カ国のサッカー協会が関わり、初代会長にはフランスのジャーナリスト、ロベール・ゲラン氏が就任した。
FIFAは加盟条件として「1カ国に1つの協会のみ」と定めた。しかし、そこで問題になったのがイギリスだ。すでに4つある協会をどうするべきか?
FIFAミュージアムによると、当時サッカーは依然としてイギリスのスポーツと見られており、人気も実力も他国を抜きん出ていた。
「1カ国に1協会」というルールはあるが、世界的な統括団体として認められるためには、この4つの参加は欠かない――そう考えたFIFAは、例外を認めることを決定。
イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドが、別々の国として加盟できるようにした(加盟後にアイルランドから南アイルランドが分離し、イギリスからの出場は「北アイルランド」となった)。
これが今でも続いており、FIFA憲章も「1カ国につき、1つの協会のみがメンバーとして認められる」と規定している一方で、「イギリスの4つの協会は、別々のメンバーとして認められる」と書かれている。