地政学・戦略学者の奥山真司が11月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。BBC記者が一時拘束された中国・上海でのデモについて解説した。
中国・上海でのデモを取材中のBBC記者が一時拘束される

中国共産党中央委員会統一戦線工作会議が2022年7月29、30両日、北京で開催。習近平 中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席が出席し、重要演説を行った。(北京=新華社記者/姚大偉)= 配信日: 2022年7月31日 新華・・・
英BBCは11月27日、中国・上海で抗議活動を取材していたBBCジャーナリストの1人が中国警察から暴行を受けて数時間拘束されたあと釈放されたと明らかにした。中国側は、ジャーナリストは報道関係者と名乗らなかったと指摘した。中国では厳しい新型コロナウイルス規制に対する抗議活動が各地で行われ、上海ではデモ隊と警察が衝突し、一部デモ参加者が連行された。
ある程度デモ活動を容認する「ガス抜き」か ~上海でゼロコロナ政策に対するデモ
飯田)ロックダウンの最中にウルムチ市の高層マンションで起きた火災で、40人あまりの方が亡くなりました。その理由に、ロックダウンで避難できなかったことが挙げられています。消防車も近付けなかった。酷いではないかというところから、全国に抗議が広がっているという背景があります。
奥山)「天安門事件以来のとんでもない状況になっている」と言っている人たちがいますし、そういう部分もあるのだろうと思いますが、ネットだけで広がっている部分を見ると、体制を動かすところまでは達していないと思います。
飯田)体制を動かすところまでは。
奥山)中国国内でゼロコロナに対する不満が溜まっていることは間違いありません。実際、このままロックダウンを続けると「中国経済は回らなくなってしまうだろう」という危機感も出ています。しかし、この辺りの話を聞くたびに「ガス抜きなのかな」という印象を受けます。
飯田)ガス抜き。
中国の歴代王朝はエリートによって倒されてきた例が多い ~エリートが鍵を握る
奥山)最近読んだ本のなかに面白いことが書いてありました。2018年に出た英語の本で翻訳されていないのですが、『The China Questions』という中国問題を扱った論文集のような書籍です。ハーバード大で中国出身の王裕華さんという方によると、中国の歴代王朝は49あるらしいのですが、この教授がそのうち282人の皇帝をすべて調べたのです。ビッグデータ化したわけではありませんが、アメリカの研究ではすべてをリスト化して、それを細かく調べることがよくあります。
飯田)そこから傾向を抽出するという。
奥山)それで中国の歴代王朝を全部リスト化して調べてみた。今回、習近平氏が3期目を行うことによって、今後どうなっていくのか、後継者はどうなっていくのかを調べた結果、「エリートが鍵を握るのではないか」という結論を出しているのです。