アニメ界の“最終防波堤” 「作画崩壊」でトレンド入りした演出家に直撃インタビュー 「作画監督が10人とかいるアニメは無駄の極み」

By | October 2, 2022


業界構造について解説する佐々木さん

【画像】アニメ演出家の1日(36時間)のスケジュール例

「次はどこの予算抜いたろーかな」「これで儲け100万くらいw」

 担当作品が「作画崩壊」だと叩かれ炎上してもどこ吹く風。過去の言動をたどると「4000万円近い年収」をほのめかす投稿も見つかった。
 こうした傍若無人な態度に憤りを覚えつつも、絶えずハイペースで新作を作り続け、待遇改善の必要が叫ばれるアニメ業界の中にあって羽振りの良さを隠そうとしない姿勢に興味をひかれた。この演出家は何者なのか? 早速コンタクトを取ってみると、あっさりインタビューの了承が得られた。
 都内某所。閑静な住宅街に彼はいた。外見はただの髭の生えた、小太りの中年だ。氏が代表を務める「スタジオレオ」の応接室に通され、単刀直入に例のアニメの話から聞いてみることにした。

アニメーターじゃないのに、原画を描いている

佐々木 今日はその辺についてもお話しできればと思っています。

――その作品では原画も担当されたそうですが、佐々木さんは演出家であり、アニメーターでもあるのでしょうか?

佐々木 アニメーターではないです。

――え?

佐々木 演出は本来、原画は描きません※。作画畑出身なら話は別ですが。

【※演出】演出はアニメーターから上がった絵を演出的な観点でチェックし、芝居や画面のバランス、他セクションへの指示出しなどに問題があれば修正指示をする。通常は直接原画は描かず、デッサン的な絵の修正などは作画監督が行う。

――それなのになぜ原画を?

佐々木 まず前提として、ちゃんと描けるアニメーターと、それに見合う昨今の相場程度の予算。これらがそろっている必要があるんです。

――そろっていなかったと。

佐々木 今の相場は1カットの原画が5000円以上。このくらいでやっと、何も使えない上がりを出してくる海外のなんちゃってアニメーターに渋々発注出来ます。国内はさらに高く、しかも他社の作品スケジュールの細い隙間に作業を頼めるかどうかです。

――頼めたとしてもガチャ感があるわけですね。

佐々木 5000円でもガチャなのに、例のアニメは単価が4000円でした。発注がそもそもできない。おまけに、うちに相談が来た時点で放送まで4週切ってる状態でした。あなたならどうしますか?

――なるほど、見えてきました……。

佐々木 そのため、あのときはコンテを描いて、原画※、演出、制作(進行)まで自分でやりました。背景もウチと取引のある会社と直接やりとりしているので、1人でほぼ全部把握できる状態です。

【※原画】ここでいう原画とは「第1原画」のことを指す。第1原画にはカットの設計図となるレイアウトと、ラフ原画(原画を清書するためのたたき台的な素材)、タイムシートなどが含まれる。

――制作進行までやっている演出さんはちょっと聞いたことないですね。

佐々木 あの予算であれば、「自分」と「社内」でほぼ完結するこの作り方が一番現実的かつ、無駄がなかった。

――予算の問題を受けて、最大限コンパクトな制作体制を取ったと。

佐々木 そうです。もっと究極的なアニメ作りの思想を言うと、俺は常々「アニメ制作は3~4人いたら成立する」とも思っています。

――確かに、昔のアニメを見ると原画人数は今より少ないですが……。

佐々木 極端ですけど、「北斗の拳」なんて原画が1人とか2人の回がありました。いろいろな作業者にばらまく方が、腕の足りない人のところで止まる可能性は高くなる。その人の手元で止まると、今度は制作進行がアニメーターを追っかける必要が出てきて、そうしたタイムロスが積み重なってスケジュールがずるずると伸びていってしまう。それだったら最初から少数精鋭で作った方が、はるかに効率が良いんです。

――でも、そんな無茶な作り方、本当にできるんですか?



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