
1カ月で100万本以上を売り上げた『復刻「生」食パン』
主食として毎日食べても飽きない食パンを通じて、「食文化の創造」の実現を目指す。高級食パンのリーディングカンパニーとして全国に約250店舗、台湾に1店舗を展開する乃が美ホールディングスは7月、『黒山乃が美』の販売を始めた。
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独自に開発した「おこげ製法」により、香ばしさとうまみがある焦がしをつけた山型食パンだ。創業時から構想し、9年の時を経て商品化した。
乃が美では4月、それまで販売していた既存の「生」食パンを全て、創業当時の素材配合で作る『復刻「生」食パン』に切り替え、期間限定で販売した。すると、わずか1カ月で100万本を販売するなど好評を得た。そこで7月からは名称を『創業乃が美』に変更し、『黒山乃が美』とともにメインの商品として販売を展開している。
この時期に乃が美が新商品を展開する背景には、高級食パンブームに陰りが見えたことがある。ITmedia ビジネスオンラインは、乃が美ホールディングスの小林祐人取締役営業本部長に、新たな取り組みと今後の戦略などについてインタビューした。前編では『黒山乃が美』開発の裏側を聞く。(ジャーナリスト田中圭太郎、アイティメディア今野大一)
100回以上の試行錯誤 実現した焦がし
東京都内で開かれた『黒山乃が美』の発表会で披露されたのは、山型の上部にしっかりと焦げ目がついた食パンだ。プレゼンテーションした同社店舗運営課の福田圭市課長は、『黒山乃が美』の特徴を「一口で3度楽しめる食感」と表現した。
「乃が美が目指したのは、皮に焦げのようなうまみがある、焦がしを追求した食感です。口に含んだ瞬間、最初に感じるのはおいしく丁寧に焼き上げられた山の部分の香ばしさです。次に中の生地まで口に含むと、きっちりとした小麦本来のやさしい甘みが広がります。そして食べ終わりには、ほのかな甘みがあるもっちりした生地が、うまみのある焦がしと一体になって、奥深い余韻が広がります」
焦がさないようにコントロールして焼き上げるのが通常の食パンだ。しかし、乃が美ではタブーともいえる焦がしにあえて挑戦し、独自の「おこげ製法」を開発。室内環境が異なる全国の各工房で合計100回以上の試作を繰り返して、全ての工房で同じ仕上げができる方法を確立した。