ナイル川の水争い エジプトとエチオピアがダム建設めぐり火花

By | June 30, 2020


 【カイロ=佐藤貴生】世界最長のナイル川で、エチオピアが巨大ダム建設を進め、下流のエジプトと対立している。エジプトは必要な水の9割をナイル川に依存し、水供給を含め国の命運を握られかねないと懸念するためだ。アフリカ連合(AU)が調停に入ったが、歴史的経緯も絡むとされ、ナイルの水争いが全面決着に至るかは不透明だ。

 問題になっているのは、エチオピアが2011年から建設している総工費約45億ドル(約4800億円)の「大エチオピア・ルネサンスダム」。英BBC放送(電子版)によると、同国は6年でダムを水で満杯にする方針で、7月から貯水を始める意向を示した。

 エチオピアの狙いは、水力発電による国内外への電力供給だ。ダムではアフリカ最大の水力発電所(6千メガワット)が21年までに稼働する予定で、同国の経済成長を支える電力を賄いたいとの期待がある。電気が届かない全人口の65%への電力供給にも道が開け、余剰電力をケニアやエリトリア、南スーダンなど周辺国に売る計画もある。

 一方、エジプトはダムの貯水が急激に進めば水不足に陥る恐れがあるだけに、貯水にもっと長期間かけるようエチオピアに要求。6月19日には、国連安全保障理事会に仲介を要請し、対話により解決できない場合は、軍事行動も辞さない姿勢を示してきた。

 だが、隣国エリトリアとの国境紛争を解決し、19年にノーベル平和賞を受賞したエチオピアのアビー首相は、「エジプトの人々を傷つける気はない」とする一方、「誰も(建設を)止めることはできない」と米国などの度重なる調停を拒否してきた。

 エチオピアは6月27日、AU議長国の南アフリカの調停を受け入れ、「今後2~3週間」でダム運用に関する協定をエジプトと結ぶとして歩み寄りをみせた。ただ、エチオピアの強い姿勢には歴史的な反感もにじみ、すんなり解決できるかは見通せない。

 ロイター通信によると、エジプトは1929年、かつて同国を保護領とした英国との間で、「水の配分に影響を与えるナイル川上流の事業を拒否する権利がある」との協定を締結。59年にはナイル川の水のエジプトへの年間割当量が明示されるなど、ナイル川の水を周辺国より優先利用できる地位を確保してきた。

 インターネットを通じて取材に応じたエチオピアのシンクタンク、東アフリカ政策研究所のレンジソ氏(38)はこの協定に触れ、「エチオピアや流域の国々の水の必要性はまったく考慮されてこなかった。エジプトは植民地時代の遺産を押し付けようとしている」とし、エチオピアのダム建設とナイル川の水資源利用の正当性を強調した。



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